大橋 奈央2022.02.04

飽くなき探求心で
唯一無二を目指す西田酒造店

株式会社西田酒造店 様

酒質向上のための設備投資

—— 設備投資には莫大な費用がかかると思いますが、それでも毎年設備投資を行う目的を教えてください。

西田 私の設備投資は、酒質を上げるための設備投資です。だから、製造数を上げるためではないんですね。でもその分、酒質が向上していると思っているし、田酒というブランドを常にトップブランドとして置いておくための、どちらかというとブランド戦略でもあると考えています。

あとは、働き方改革にも繋がりますよね。例えば、米を洗う洗米という作業。従来は3人で米を半自動手洗いしていたのですが、全自動洗米浸漬機を導入したことで、1人で作業ができてしまうんです。そうなると、残りの2人は別の仕事に取り組んでもらえる。すると、別の仕事にも余裕が生まれるため、交代で休みが取れるなど、いろんな可能性が広がる。つまり、人減らしのための機械導入ではなくて、余裕を持たせるための設備投資となるわけです。尚且つ再現性も上がり酒質も向上するので、いいこと尽くしですね。
—— なるほど。酒質向上のための設備投資なのですね。

西田 そうですね。うちのベースとなっている特別純米というのが、商品構成の約半分を占めているのですが、このレギュラー商品の酒質を上げることがブランド戦略という観点からも重要です。そして今あるものをより良くすることのほかにも、今まで挑戦したことがないことに着手する、つまり、新商品の開発も必要ですね。

うちは、毎年2、3アイテムずつ新商品を出しています。たとえば、2021年でいうと、同じ青森県の陸奥八仙さんと豊盃さんとうちの3社で「三ッ友恵・あおもり酒米プロジェクト」と題して、4月から3カ月連続でコラボ商品を出しました。これは、陸奥八仙さんが普段使っている米「レイメイ」と、豊盃さんの米「豊盃」、そして田酒の米「古城錦」を交換し、それぞれ精米歩合55%で純米吟醸を造って、3本セットで販売し、お客様に味比べをしてもらうという企画です。話題性はもちろんですが、普段うちで使わない米で仕込むことは、挑戦でしたね。

こういう新しい取り組みや新商品の開発はとても必要なことだと思います。従来のものをブラッシュアップすることと、新しいことに着手すること。この両方がないと技術革新はうまくいかないですね。
—— 酒質向上のための設備投資や新しいことに挑戦する重要性がわかりました。やはり美味しいお酒には理由があるのですね。

西田 うちは半分近くが特別純米で成り立っているので、この酒質が落ちたらもうアウトなわけですよ。言い方が悪いかもしれないけど、一番安い酒が一番美味しくないといけないというか。価格が高いものは美味しくて、低いものは美味しくないだとだめなんですよね。どの商品を飲んでも絶対に旨いっていう自信がないと。そのための設備投資であり新商品の開発です。

現状に満足しているようではその先に未来はないですからね。もちろん伝統は引き継いでいますよ。たとえば、地元の米を使って、特別純米を造るとかね。とはいえ、米の磨き方をちょっとずつ良くするなど、少しずつ進化させていますけどね(笑)

それでいうと、サタケの精米機を導入したことで、原形精米ができるようになったので、同じ精米歩合55%の米でも、タンパク質の値なんかは従来のものと比べると少なくなっているから、やはり進化していますね。